

工場や学校をまるごと冷やすシステムを実現
日本の猛暑日の日数は、1990年代半ば頃を境に大きく増加*。
こうした中、工場や学校の体育館等をまるごとクールダウンするシステムを開
発し、全国の企業や自治体からの発注で業績を伸ばしているのが同社だ。中国
市場の獲得も目指している。
*文部科学省・気象庁報告書「日本の気候変動2020」


「私は排煙装置などの設備工事をする会社で働いたのち、1993年(平成5)に大阪で独立しました」(吉村正年社長)
排煙装置は、ビルや工場など不特定多数の人が入る施設や建物に法令で設置が義務づけられている。火災時の大量の煙を迅速に排除するためだ。排煙装置には、自然な排煙を促す天窓のようなものや、電動の屋上換気扇など各種あり、同社はそうした機器の設置工事で少しずつ実績を重ねていった。
ある年の夏場、吉村社長が某工場で設備のメンテナンスをしていた時だ。汗だくで作業をしている従業員から「この暑さ、何とかする方法はないですか」と尋ねられた。
工場の広い空間は吹きさらしで機械が並び、ダスト対策でもある換気扇が常時回っている。普通のエアコンで工場全体を冷房しようとすれば、冷気が拡散し、室温を下げるのに莫大なコストがかかって無理だ。解決法はないか──吉村社長は取引先の「涼風ファン」という商品に目をとめた。
涼風ファンは、内部タンクに貯めた水道水をポンプで冷却エレメントに循環させ、ファンによる気化熱現象で冷気を得る、200V電源の業務用大型気化式冷風機だ。
吉村社長はひらめいた。涼風ファンと屋上換気扇が同じモーターを使っていると気づいたのだ。
「工場空間に合わせて両者を調整すれば、冷風の供給と屋上からの熱の排気を『1対1』にでき、気流で効率的に温度を下げられると思ったのです。工場の方に実験を提案し、やってみました」
結果は劇的で、工場内部の温度が5℃ほど下がった。「うちもやってくれ」とあちこちの工場から依頼が来るようになった。そこで2011年、施設ニーズに合わせて冷風を供給するシステムを「涼風プランⓇ」と名づけ、「工場まるごとクールダウンⓇ」の宣伝文句で販売を開始した。
さらに翌年、吉村社長は移動式の超大型気化式冷風機「ストロングクールⓇ」を開発した。ポイントは、極めて大風量でありながら、100V電源で稼働すること。
すると東京・大田区から、児童生徒の熱中症対策として、区内の学校体育館に導入を検討したいとの連絡が入った。結果、自治体との大型契約が初めて実現した。

展示会で展示された、「ストロングクール」を始めとした各種商品
大田区の担当者はネットで「ストロングクール」を見つけ、同社へ連絡してきたという。実はサイシュウテクノの営業マンは、売り込みに歩くことを一切やっていなかった。
「ニッチな商品なので、ニーズと的確に結びつくには、ネット活用しかないと思っていました」
会社の公式サイトと事業紹介のユーチューブチャンネルを開設。問い合わせが来て初めて、営業マンがサンプル機を先方へ持参し、体感してもらう作戦を取ったのだ。
「ストロングクール」は、発売当初は年に数台売るのがやっと。装置の改良に努め、年に数十台売れるようになった。そうした2017年の夏、猛暑が日本を襲った。気象庁は「従来の猛暑を超えるスーパー猛暑(最高気温37℃)」と表現した。大田区から相談があったのはその翌年だった。区は100V電源しかない体育館の暑さ対策に悩み、同社を発見したようだ。
顧客が増えた同社は、機器の生産が国内の協力工場では間に合わなくなった。そこで吉村社長が着目したのが、技術が向上した中国の工場。何度も通って信頼関係を築き提携を実現、増産に成功した。
同社の成功を見て、追走する冷風機メーカーも出てきた。だが同社をしのぐことはできなかった。理由は大きく二つ。第1に、競合メーカーは大型の冷風機は作れても、空間に合わせた循環空調システムの施工能力に欠けたこと。第2に、同社がレンタル用の冷風機を大量に用意していたことだ。
同社が大田区の公立校をまとめて受注できたのも、レンタル能力のおかげだ。
「『ストロングクール』を作り始めた時から、販売用に加えてレンタル用を少しずつストックしたのです。現在、レンタル機の数は約1000台。これだけの台数をそろえている企業は他にありません」
例えば自治体の場合、各学校に数台ずつ、地域の数十校分つまり100台規模で必要だったりする。同社はそれに対応できるからこそ、次々と契約がまとまるのだ。

バッテリー接続型エアコン「ストロングクール+」
(フォークリフトへの装着例)
昨年には、「ストロングクール」の新商品2機種「V」と「+(プラス)」を登場させた。「V」は、世界初の100Vで気化式と大型クーラーのハイブリッドを実現。大風量で移動式だ。また「+」はバッテリー接続型エアコンで、建設重機やゴルフカト、仮設トイレなど幅広く対応する。
「全国各地の需要に応えるため代理店を増やし、中国でも代理店を得て市場開拓を始めました」
中国に進出したのは、労働環境が日本より厳しく、涼風プランの潜在ニーズが極めて大きいと感じたからだ。よりダイナミックな事業展開を目指して、新商品の開発に一層拍車をかけている。
| 社長 | 吉村正年氏 |
|---|---|
| 創業 | 1993年(平成5)4月 |
| 設立 | 2007年(平成19)8月 |
| 資本金 | 10百万円 |
| 従業員数 | 18名 |
| 事業内容 | 施設クールダウン機器の製造販売・レンタル、 屋上換気扇・排煙窓等の施工 |
| 所在地 | 〒561 - 0805 大阪府豊中市原田南1-19-25
06-4866-2233 06-4866-2244 |
| 取引店 | 関西みらい銀行豊中服部支店23 |