社員が主役。社員を大切にし、時間がかかっても「働きがい」のある会社にしようと思ったのが、一番の決断ですね。

「買い物ゴコロに、火をつける。」をスローガンに、家電業界、自動車業界、化粧品業界をはじめとしたさまざまな業界で販売支援を行う。50年余の歴史と豊富な実績を持ち、北海道から九州まで全国に支店を展開。購買促進・販売促進事業、プレミアムグッズ・SPツールの企画開発・販売、エリアキャンペーン・イベント・展示会の企画立案、購買促進・販売促進専門誌発行などを展開するセールスプロモーションのプロフェッショナルだ。

聞き手
りそな総合研究所代表取締役社長 米谷高史
御社は、1972年(昭和47)の設立ですが、設立の経緯は。
長野はい。義父の長野安夫と弟の長野忠夫の兄弟で始めた会社を2014年(平成26)に事業承継しました。BtoBのギフト事業に特化して、お客さまとその先の生活者の気持ちをつなぎ、お客さま、内海産業、協力会社の笑顔を生むような「ご販売のお手伝い」をやっていこうということで事業が立ち上がったようです。創業者の出身地(福山市内海町)の名を冠した会社です。

使いやすい価格帯をカバーすることで家電、化粧品、ガソリンなど小規模小売店の販促マーケットを開拓

そこから、順調に発展されていったということですか。
長野創業後、ご縁ができた大手電機メーカーさんの、町の電気店さんの販売促進に集中していったようです。当時、全国にたくさんあった電気店さんにご利用していただき、商圏が広がり順調に成長していきました。
  • 廃棄される「麦わら」を使用した「ザ・テーブルウェア」

  • 名刺ポケットが付いたCO2排出権付き「地球スポンジ」

  • 通常は廃棄されるコーヒーの豆かすを使用した食器類

電気店さんも、昔は多かったですね。
長野そうですね。現在も町の電気店さんはわれわれの大切なお客さまです。電気店さんのような小売店にとって小ロットで買いやすい価格帯の多彩な商品を提供したことが、わが社が伸びた要因だと思います。
次の柱となった化粧品は、訪問販売ではなく小売店ですか。
長野はい。昔は、電気店さんだけでなく化粧品店さんも町にいっぱいありましたから。当時はノベルティではなく「助成物」と呼んでいたようです。「いくら以上買うとこれを差し上げます」といったキャンペーンに、ランク別の商品構成と、キャンペーンを告知するDMはがきをセットにして小ロットで提供していたので、かなり重宝していただいたようです。
その後、全国のガソリンスタンド、自動車ディーラー、金融機関、住宅・不動産、通信など、お客さまの裾野が広がりました。

経験とノウハウを生かし、選択肢をぎゅっと凝縮した販促専用カタログ「ご販売のお手伝い」

そのように順調にお客さまを増やされてきた御社の強みは、豊富な仕入れルートですか。
長野確かに、今も増え続けている多様な協力会社さんが強みだと思います。現在はお客さまご自身がネットで探すこともできますけど、情報があふれていて、何を選べばいいか分からないというお客さまも多いと思います。わが社には、商品情報だけでなく、お客さまからフィードバックされた成功体験が蓄積され、それを全ての社員と共有しています。その蓄積された情報を生かしたご提案ができることが、われわれが提供できる価値の一つだと思っています。
受注は、主にカタログ経由ですか。
長野はい。カタログを介した売り上げが7割ぐらいです。それ以外に協力会社さんとの共創によるオリジナル商品やカタログに載ってない商品も取り扱います。選択肢をぎゅっと凝縮した販促専用のカタログ「ご販売のお手伝い」は、1970年代の創刊ですが、これはお客さまである販売店さんにとって、エポックメーキングだったのだと思います。
  • 同社の営業の要「ご販売のお手伝い」

最近の売れ筋には、どんなものがあるのでしょう。
長野エコバッグやマイボトル、最近ではCO2排出権を付けた商品など、SDGsを啓蒙する商品の反響が大きくなっていますね。加えて、社内報賞や周年記念のような、お客さまが社員のエンゲージメントを高める需要が高まっていて、大きな案件も生まれています。

「褒め活」による「承認文化」で「昨日の優れた仕事が今日の当然の仕事になっていく」

社長にとって一番の決断は何ですか。
長野私が社長になった2014年(平成26)の翌年から人事制度を作るためにりそな総研さんにお世話になりました。その時に社員を対象にアンケートを行ったのですが、会社や経営への評価が極端に辛辣だったんです。
難しいですよね。厳しさも必要ですし、そのあたりのバランスが。
長野人事制度を作るのは、社員みんなのためにいい会社にしようと思ってやるわけです。だけどそれ以前に、会社に対する根本的な不信感があることが分かりました。それで、社員が主役。社員を大切にし、時間がかかっても「働きがい」のある会社にしようと思ったのが、一番の決断ですね。社長になった時は、先代から引き継いだ会社を伸ばさなきゃと、非常に高い成果を求めてばかりいましたから。
そのご決断後、具体的に変えられたことを教えてください。
長野毎年7月ぐらいに展示会があるのですが、それまではいかにコストを下げて、名刺をいっぱい集めて、業績につなげるかという運営をしていました。でも次の年の展示会では、現場で頑張ってくれる社員に、ちょっと高めのお弁当を出そうとか。小さなことから、社員を大切にする取り組みを始めました。自慢じゃないですけど、わが社の社員はみんな真面目で、誠実に仕事をしてくれています。そして、それぞれに自分の考えを持っているんです。でも、その考えをなかなか吸い上げられていないというのが課題だと思ったので、意見を聞くために全社員と1on1ミーティングを行いました。また、部門横断のプロジェクトを複数立ち上げました。
  • 東京・新橋駅からほど近い本社

  • 本社内の階段には、SDGsの17目標がデコレーションされている

育成面で工夫されていることはありますか。
長野社内で「承認文化」と言っているんですけど、いい仕事をした時に認める仕組みを作っていることですね。「褒め活」という、われわれの理念に基づく活動があったら、社内SNSでバッジを贈って褒める取り組みがあります。また、さらに卓越した仕事をミッションアワードとして表彰する取り組みを毎月行っています。褒めることでモチベーションを高めながら、質の高い取り組みを可視化することで、みんながまねをしていって、「昨日の優れた仕事が今日の当然の仕事になっていく」文化の定着を目指しています。

「ぐるぐるリボンモデル」で「承認文化」と「継続学習」を循環させ
経済成長と環境悪化の分断を図る

今後、この会社をどのような形にしていきたいと思われていますか。
長野2019年(令和元)に、われわれの企業理念に基づいてSDGsにどうコミットするかを定めた「8・4(ハッピーショッピング)宣言」を制定しました。日々の仕事でミッション『最上の着想で、購買欲に火をつける。』を実践し、優れた商品・サービスの長期的・熱狂的ファンづくりをお手伝いすることで、カスタマーサクセスに貢献し、生活者に対しては「『買ってうれしい』『買ってよかった』という〝笑顔〞を日本中にあふれさせ、同時に「SDGsの達成に貢献します」と宣言し、「SDGs価値創造モデル」―社内では「ぐるぐるリボンモデル」と言っています―としてモデル化しました。
その原動力になるのが、卓越した仕事を可視化する「承認文化」と「継続学習」です。情報の循環をどんどん加速させ、これからも「買い物を楽しみ、モノを大切にする持続可能な社会」づくりへの貢献というわれわれのパーパス実現に向けて、邁進しようと思っています。
  • 同社のSDGsへの取り組みをモデル化した「価値創造モデル(ぐるぐるリボンモデル)」

いいですよね。最近はシェアリングという言葉がはやっていますが、やっぱり購買の楽しみってあるんですよね。
長野はい。シェアリングも買い方の一つだと考えていますが、買い物が楽しくない世の中では経済は回らないので、微力ながら「経済成長」と「環境悪化」を分断するような取り組みに挑戦していきたいと思っています。
ありがとうございました。日本経済のためにも、ますますのご発展を期待しております。

PROFILE

設立 1972年(昭和47)8月
資本金 10百万円
従業員数 170名
事業内容 購買促進・販売促進、プレミアムグッズ・SPツール
の企画開発・販売、エリアキャンペーン・イベント・
展示会の企画立案、購買促進・販売促進専門誌発行
所在地 〒105 - 0004 東京都港区新橋2-12-3

03-5512-1200

03-3504-3515

https://utsumi-sp.co.jp/

取引店 りそな銀行新橋支店

interview後記

「買い物ゴコロに、火をつける。」セールスプロモーションのトップランナー内海産業株式会社の長野社長です。
かつて、社長は私たちと同じように銀行員でした。ご自身の努力をはじめ、お客さま、部下に育てられ、立派な経営者になられた。「傾聴力」に優れた長野社長。私も見習わねば(分かってはいるけど難しい)。

(米谷)